【Maker Faire Tokyo 2023】おしゃべりぱくちゃんず作成までの道のり(2)~ボディ製造編~

3Dプリンタ, M5Stack, MakerFaireTokyo

はじめに

NX開発推進部Android開発グループ所属の深沢と申します。今回は、Maker Faire Tokyoに参加し、出展物作成までの過程を振り返りたいと思います。Maker Faireとは何かについては公式サイトをご参照ください。

全4回投稿予定です。本記事は第2回になります。


検証により動きの部分はなんとかなりそうというのが確認できたので、続いてぱくちゃんのボディを作成していきます。

今回作成するもの

企画段階でイメージ画像として描いた下記画像があります。


おしゃべりぱくちゃんずイメージ画像

画像の外側の部分(黒ペンで描かれた部分)を立体化させていこうと思います。今回は会社で購入した3Dプリンタで作成することになりました。ちなみに3Dプリンタも人生初体験です。

3Dモデリング

まずは、印刷物のモデリングです。ぱくちゃんのボディ制作には、3Dモデリングツールのblenderを用いました。以前数時間ほどblenderを触った経験があったので、その記憶を頼りにモデリングに挑みました。
blenderを駆使してモデリングしたものが次の画像になります。

blender上で見るといい感じです。blenderを少しだけ触ったことがあったのとぱくちゃんが単純な形だったのでこのモデリングはそこまで難しくありませんでした。強いて言うなら、目の位置を調整するのに手間取ったくらいです。

早速3Dプリントしてみる

上下同時に印刷することは無理だと素人ながら思ったので、下半分は別のファイルに移動させ、上半分だけstlファイルに変換し、人生初の3Dプリンタ印刷を行いました。


下半球を移動させ、上半球のみにした

結果、印刷され出てきたのがこちらです。

ぱくちゃんボディ1号はぱくちゃんのぱの字も見受けられないような完成品となってしまいました。blenderで見たときはいい感じだったのに、、、と少し落ち込みながら原因を探していると画像のようになってしまった理由はすぐに判明しました。私が初めて作成したボディは厚みなど全く考えられていなかったからです。また、今回使用している3Dプリンタは熱溶解積層法というものを採用しているプリンタで、これはそもそも球体が苦手だということもわかりました。

熱溶解積層法で球体を作るには厚みが必要だということでしたので、次は厚さを考慮してモデリングを行いました。

厚みは考慮したが、、、

プリンタ用のモデリングには厚みが大事なポイントであるということがわかりましたので、今度は厚みを意識してモデリングを行いました。

少し画像からだと分かりづらいですが、大分厚みをもたせました。印刷時間も10分から1.5時間くらいに増えました。直径などは変更していないので、前回がどれだけスカスカだったのかがわかると思います。

印刷時間が長かったので他の仕事に取り掛かり、半分プリンタのことを忘れかけてた頃に印刷が完了しました。印刷完了時にプリンタの上に乗っていたものがこちらになります。

厚みはいい感じなのですが、なぜか途中から印刷材料であるフィラメントが出てこなくなり、印刷が途中で止まってしまいました。第2号も失敗です。なぜこうなったのか分からなかったので、次は印刷している間も目を離さないようにしました。
フィラメントが出てこない理由を探るべく3回ほど印刷を繰り返していると、どうやらフィラメントがボビンの中で絡まってしまい、プリンタがフィラメントを巻き取れなくなっていることが原因だとわかりました。


絡まっているフィラメント。本来はこれがプリンタに引っ張られて印刷していきます。

どうすれば絡まないのか考えましたが、いい案が思いつきませんでした。そのため、対処療法になってしまうのですが、「絡まったら人力でほどく」という方法でMaker Faire Tokyo本番まで乗り切りました。(この問題のいい解決策がありましたら教えていただきたいです。)

そして遂に

厚みとフィラメントの絡まりに特に注意しながらモデリングとプリントを行ったところ、遂に半球を印刷することができました!!


印刷した半球。球体作成優先のため、この時点では目玉はモデリングしていません

第1号から今回印刷したものまでを並べるとこんな感じです。
かなり改善されたのがわかるかと思います。


半球印刷進化図

完成モデル

色々と試行錯誤していきながら最終的に決まったのが以下のようになります。上記では上半球しか言及していませんが、下半球についても同様に調整を行いながらモデリング&印刷を行いました。


上半球


下半球

上半球はぱくぱく動くことを考え、薄く軽くすることを意識しました。しかし、薄すぎると隙間ができてしまい、綺麗な半球にならないため、そのバランスを考慮して最終的な形に落ち着きました。

下半球は回路を収納するために、上半球よりも分厚くしています。また、自立するように、底部分を平らに設計しました。

上記を実際に印刷したものが下画像になります。

ぱくぱくさせるための工夫

半球2つ以外にもボディにはパーツがありますので、それらについても紹介いたします。

まずは蝶番です。今回は蝶番で上下を留めることにしました。
そのため、ボディには1cm程度の縁を作成し、蝶番を付けられる場所を確保しました。下半球の縁についている小さい穴は蝶番のねじ止めの目印です。この穴に市販の金属製蝶番をねじ止めし、上下を固定しました。

また、ボディ+蝶番の状態でちゃんとぱくぱく動くか確認してみると、動きはするもののぱくぱく運動が安定せず、モーターが空回りしてしまうことがありました。(モーターの話は第3回に詳しく書きます)
試しに、上半球を手で補助してあげるとかなり安定しましたので、手のかわりに私達が奥歯と呼んでいる部品をぱくちゃんに追加することにしました。

ぱくちゃんの間に挟まっている円柱型のものが通称奥歯。これによりぱくぱくと動きやすくなりました。

これにより、ぱくぱくが安定するだけでなく、スピーカーも外に見えるようになったので、音も安定するという副産物を得ることができました。

これでボディの基本が完成しました。

さいごに

以上がボディ作成までの紹介になります。
かなり完成形までを省いてしまったのですが、私のPCに残っているだけでも上半球22パターン、下半球14パターンもモデリングしていました。フィラメント絡まり問題でやり直しになってしまったり、微調整だけして保存していないものもあるので、実際のモデリングや印刷回数はかなりの数字になっていると思います。はじめての3Dプリントだったので、モデリングやプリンターの操作について、効率良く思う通りに印刷する方法を探りながら取り組むのが大変でした。

今回の記事ではぱくちゃんのボディ作成について紹介しました。
次の記事は【Maker Faire Tokyo】 おしゃべりぱくちゃんず作成までの道のり(3)~ぱくちゃん中身試行錯誤編~と題して、ぱくちゃんが動くための機構などについて触れたいと思います。

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