この記事はレコチョク Advent Calendar 2025 の4日目の記事となります。
最近、大手企業の新卒採用停止の話題を目にするようなってきました。
この波が広がって本当にいいのか?という話です。
業界が若手の育成を辞めると将来何が起きるか
これまで
- 各社には若手~中堅が混在した最適人数のエンジニアが居ます
- 毎年1人の自然減を見越し、各社は1人を中途採用し、1~2人を新卒採用します(人数は例です)

AI時代初期
- AIが登場し、各社に必要なエンジニアの数が減ります
- 各社は新卒・若手の採用を止めます

数年後
- 自然減により各社には適切な人数のエンジニアがいる状態に収束します
- 内訳の大半が中堅エンジニアになります

さらに数年後
- 業界全体のエンジニアが不足状態に陥り、必要数を維持できなくなります

若手は自然発生しない
業界に若手が増えるのは、新卒採用と育成を行う会社が存在するからです。
そして新卒採用には時間がかかります。
上記状況になってから各社が業界内から若手の補充が困難になっていることにじわじわ気づきはじめますが、 そこから新卒採用を再開したとしても、入社までには1~2年のラグがあり、この状況がしばらく続きます。
どうするべきか?
エンジニアの必要数が減ったとき、最短で適正数を目指すには確かに採用止めるのが早いです。
ですが、今減っていってほしい状況だとしても、「採用を止める」のではなく、「採用を減らす」に留めるべきだと思っています。
これまでの採用ペースで人の出入りが拮抗していたのであれば、採用ペースを落とすだけでも減少に転じるはずです。
適正人数に収束するまでの期間が長くなってしまうかもしれませんが、業界全体の若手不足は抑えられます。
若手を育てていくことは業界全体の責任
そして上記は1社だけが取り組んでいっても意味がありません。
自社ではコストをかけて新卒・若手を育成し、数年後に旅立っていくにもかかわらず、 他社からの若手は入ってこない、という自社だけが割を食う形になってしまいます。
そのため、新卒・若手の採用と育成は引き続き業界全体が続けていかなければいけません。
そこにインセンティブはあるのか
とはいえ企業なので、理想論だけのためにコストは払えません。
AIのパフォーマンスの前に未教育の新卒が見劣りしてしまい、 新卒採用にコストをかける意味を見失ってしまうかもしれません。
ですがまず、若手の社員が生み出す価値はコードを生成することだけなわけがないことを思い出すべきだと思います。
また、新卒の座席を奪うことになったAIは、新卒の味方でもあります。
今のシニアエンジニアが昔、変なブログからコピペしてきたコードが動かなくて苦戦している間に、 今の20代くらいのエンジニアは優れたOSSやたくさんの技術記事を活用して、より素早く成長してきました。
そしてこれからのエンジニアは、嫌な顔一つせず何度でも質問に答えてくれるAIが味方です。
もちろん育てる側も新卒とAIの適切な距離感を模索していく必要があると思います。
そうしてAIによって新卒の成長スピードも高速化できれば、 企業側にとっても新卒育成に価値を見い出しやすい状況は保てると思います。
また、業界全体の成長が巡り巡って恩恵となって返ってくるという構図は決して夢物語でも気の遠くなる話でもないと思っています。
例えば、OSSや技術記事に一度もお世話になったことがないエンジニアはいないはずで、 これらだって紛れもなく業界全体で育ててきて、全員で恩恵を受けてきたものです。
業界全体で若手を育てていくことにも同じ価値を見い出せると思っています。
おわりに
僕はこれまで、自分が新卒から育てたメンバーが退職してしまう機会もありましたが、あまり悲観したことはありませんでした。
彼らは同じ業界の別の会社で誰かの役に立っていくはずですし、 逆に他社で育った優秀な若手が自社に入ってきてくれることも同じようにあるからです。
業界全体で良い代謝が起きていることを実感していました。
これから先エンジニアの絶対数が減ったとしても、その好循環は続いていってほしいなと思います。
明日の レコチョク Advent Calendar 2025 は5日目<Nomad Sculptでオリジナルキャラを3Dモデル化!>です。お楽しみに!
kitamura