デジタル音楽業界を支える仕組みとは #1

はじめに

こんにちは、長澤です。
ユーザーがデジタル音楽配信を視聴するまでにどのような流れや仕組みで届けられているかご存知でしょうか。
本記事では楽曲情報の制作からユーザーへ届くまでの流れ、それを支えるERN規格という仕組みついて説明したいと思います。

本記事の対象読者

  • 楽曲情報の流れる仕組みを知りたい人

楽曲情報の流れや仕組みを理解するための最初の一助となるような記事になればと思います。

音楽をユーザーに届けるまで

はじめに、 音楽をユーザーへ届けるまでの流れについて図表を使って説明します。

音楽配信の流れ.JPG

登場人物 概要
アーティスト 歌唱者、作詞者・作曲者等の楽曲制作に関わるクリエイター
RH(Rights Holder) 著作権利者、レコード会社。アーティストや楽曲情報の管理、流通、広告等に携わる事業者
DSP デジタルサービス事業者。自社のサービスを介して音楽をユーザーに届ける会社

図のような工程を経て音楽をユーザーに届けています。
レコチョクも自サービスを介して音楽を届けているのでDSPに該当します。
以降で、レコチョクがどのようにRHから楽曲情報を提供頂いているかを説明いたします。

楽曲情報提供の流れを支える仕組み

レコチョクに楽曲情報を提供頂く仕組みについて、大きく2つの要素に分解できます。
まず1つ目は楽曲情報そのものを表すコンテンツがあります。
コンテンツは上記の流れの中で実際にレコード会社からDSPへ提供するそのもので、主にアーティスト名、アルバム及びトラック名などの楽曲に関する情報を記したファイル(メタファイル)と、レコーディングされた音楽や動画コンテンツ(バイナリファイル)から構成されます。

仕組みのもう1つの要素が、そのコンテンツの授受の方式を具体的に取り決めた規格(メタフォーマット)にあたります。
この規格は数種類が利用されており、例えばApple社のように独自の規格を用いているDSPもいれば、業界団体によって取り決められた標準的な規格を用いているDSPもおります。
レコチョクでは現時点で業界デファクトスタンダードとなっているDDEX規格(主にERN)を利用する事が多くなっております。

そこで、今回は実質業界標準となっているDDEX規格やその規格内のコンテンツ授受方式を定めたERNメッセージスタンダードについて説明していきたいと思います。

DDEXとは

「Digital Data Exchange」の略で、レコード会社やDSPがデジタル音楽バリューチェーン発展のため国際標準化活動を推進するために設立された団体です。
DDEXはデジタル音楽バリューチェーン発展を目指しており、レコード会社やDSPなどと協調して音楽業界全体における様々な規格化(売上レポートや著作権報告等)に取り組んでいる団体です。

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DDEX参加メンバー

Apple、Google、Spotifyなどの名だたるDSPを中心に、世界各国のデジタル楽曲配信サービスに関わる組織が参加しています。

キャプチャ.jpg

ERNとは

「Electronic Release Notification」の略で、コンテンツ(メタ情報ファイルと音楽ファイル)の授受に関する標準規格です。
主にRHからDSPへのコンテンツ提供にフォーカスした規格となっています。

ERNは既に多くのRHやDSPで採用されており、実質的な業界標準であるといえるかと思います。
DSPの1社であるレコチョクとしてもRHから楽曲の提供を受ける際にERNを利用しています。
DDEXやRH、DSPの尽力によってERNを採用している事業者が増加傾向にあり、この音楽サプライチェーンにおいては知っておかなければならない規格であると思います。

今回の記事では、このERN標準規格において、アーティスト名やアルバムタイトル、トラックタイトルなど(メタ情報)をどのように表現すればよいかの触り部分を説明します。

ERN規格でメタ情報を表現する

ERN規格において、メタ情報を記していくにはXML形式のフォーマットに従う必要があります。
このXML形式のフォーマットの主要要素について今回は紹介したいと思います。
※尚、ERNといっても主に2つのメジャーバージョン(Ver3シリーズ、Ver4シリーズ)があり項目や扱えるコンテンツが異なるのですが、ここでは現時点で最新であるERN4シリーズをベースとして説明します

ERN定義.JPG

更に理解を深めるために具体例としてメタ情報をフォーマットの主要要素を表現いたします。
具体例ではERNの構成およびResourceList(楽曲単体)の楽曲情報をピックアップしています。

上記ピックアップしてサンプルメタを表現させていただきました。
今回省略させていただいたERN規格の要素の構成や詳細はこちらから取得できますのでご活用ください。

おわりに

音楽がユーザーに届くまでの流れ、また提供仕様の1つであるERN規格について紹介しました。
DDEXは既に業界の実質的な標準となっており、デジタル音楽業界が活性化していく上で必須技術となっています。
DDEXには先にも述べたとおりERN規格以外にも様々な規格が策定されています。
#2では1年に2度開催されるDDEX Plenary MTGで最新情報を紹介できたらと思います。

参考文献

https://ddex.net/
https://kb.ddex.net/

この記事を書いた人

長澤 雄平
長澤 雄平
楽曲管理関連のシステムを担当しています。
モータースポーツとお酒が好物です。