【Maker Faire Tokyo 2023】レコチョクマミン(テルミン風楽器)を作ってみた

3Dプリンタ, M5Stack, MakerFaireTokyo

はじめに

この記事では、弊社がMaker Faire Tokyo 2023(以下、MFT)にて開発・出展した電子楽器である
レコチョクマミンについてご紹介します。
MFTは、電子工作を中心とした多様なテクノロジー系DIYを楽しむことができるイベントです。
以下では、企画会議から完成品の製作、そして本番での反響について詳しく解説していきます。

企画会議

本チームは「入力にフォーカスしてアイデアを出すチーム」だったので、まずはセンサをいくつか試しました。

  • 非接触温度センサユニット
  • 温湿度気圧センサユニット
  • ToF測距センサユニット

この中から距離を測るセンサを使って音を出す事を考え、似たような仕組みを持つテルミンを作成する方針としました。
また、最初から弊社キャラクターであるレコチョクマをデザインに組み込めないかという考えもあったため、
レコチョクマ×テルミン = レコチョクマミン の作成に至りました。

完成品

こちらがレコチョクマミンです。

完成品ムービー640.gif

レコチョクマを3Dプリンタで印刷し、両手に距離センサを組み込みました。
距離センサに両手を近づけたり離したりすることで、M5Stackが距離の値を受け取ります。
その値をArduinoで処理し、Processingに送り音を鳴らすようにしています。

ボディ作成

レコチョクマミンのボディ部分はBlenderで作成した3Dモデルを、3Dプリンターで出力したものです。

モデル作成〜最初のプリント

球や立方体、円錐を駆使しながら、このようなモデルを作成しました。

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そしてこのモデルを5cm程度の大きさで出力したところ、途中で下から剥がれてしまいました。

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3Dプリンター初挑戦のため、何故剥がれたのか・どうすれば剥がれないのかを調査しました。
結果、底面と上面の出力スピードを遅くして、無事に完成しました。

センサを入れる手の部分の検証

レコチョクマミンは手に距離センサを入れて、レコチョクマとハイタッチをするような操作にしたいと考えていました。
そのため、手にセンサを入れられるような構造が必要です。
また、センサが剥き出しでは味気ないので中に入れたいのですが、出し入れが容易にできるようにもしなければなりません。
そこで、ピンと穴をつくって、着脱できるようにしました。
これらを考慮した結果がこちらです。

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ちなみにセンサが入る空間は大きさを測って作ったので、かなりぴったりハマっています。

2つ目のモデル作成〜本番用のプリント

手の部分が想定よりも綺麗にできたので、この大きさをもとに1つ目のモデルを修正していきました。
手と同じように前後で分割し、ピンと穴、そしてお腹の部分には以下の部品を入れる用の空洞も作ります。

  • M5Stack Basic
  • I2C拡張ハブユニット
  • 各部品をつなぐケーブル

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これを出力しようとすると1つ7時間半超えの大作となり、途中で失敗したときのショックが大きすぎると考えたため、
分割しても目立たない頭と胴体で更に分割しました。

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各パーツの出力時間が3時間半程度に減りました。
出力するとこのようになり、内部に入れたかった部品を入れられるようにできました。

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仕上げ

最後に仕上げとして、レコチョクマの顔のパーツに着色し、白い部分をヤスリをかけて磨き上げました。
3Dプリンターで出来上がったままだとわかりやすく線がついていましたが、ヤスリで削ることで目立ちにくく、手触りも良くなりました。
MFT当日はこのレコチョクマミンを来場者の方にお見せしました。

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プログラム作成

レコチョクマミンのソフトウェア部分には、以下を使用しました。

  • Arduino
    • M5Stackに接続されているセンサからのデータを取得するプログラムを記述しました
  • Processing
    • UIの描画と音の再生を行いました

ArduinoからProcessingのシリアル通信

M5Stackに接続されているI2C拡張ハブユニットと、
そのハブユニットに接続された2つのToF測距センサユニットを使って、
レコチョクマミンの両手に搭載された距離センサから音の高さと音量のための値を取得しています。

収集したデータはProcessinにシリアル通信で送信しています。

ProcessingでUI描画

距離センサで取得した距離の値を利用し、Processingで音の生成と鍵盤のUI描画を行っています。
レコチョクマミンはどの音を演奏しているのかを把握するのが難しいという課題があったため、
鍵盤形式のUIをディスプレイに描画することで演奏の難易度を下げる工夫を行いました。

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音の調整

テルミンの操作感をより深く理解するため、実際にテルミンを購入して試してみました。
その結果、テルミンで特定の音(例えばドレミファソラシド)を出すことは難しいことがわかりました。
これを踏まえて、MFTのイベントにおいて来場者様が実際に触れて楽しむ時間を考慮すると、
ドレミファソラシドを容易に出せる設計の方が望ましいと判断しました。

それに基づき、ドレミファソラシド以外の周波数が出力されないようにプログラムを作成しました。
そして、特定の距離に応じて特定の音が出るように設定しました。
例えば、手がセンサから6cm~8cmの距離にある場合、「ド」の音を出すといったものです。
この設定では、距離が2cm変わると音が変わるようになっています。

当初は閾値を1cmに設定していましたが、
社内デモンストレーションで操作が難しいというフィードバックを受けて、閾値を2cmに設定しました。

手を前後に動かして演奏する設計上の制約として、手を後ろに持って行けるのは最大で30cm程度であり、
これが原因で鳴らすことができる音に制限が生じてしまいました。
これは改善点として考えています。

本番

全ての準備が整い、ついにMFT当日を迎えました。
たくさんの方にご来場いただき、レコチョクマミンも約600名の方に体験していただきました。

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体験いただいた多くのご来場者様からは、「楽しい」「面白い」「かわいい」「すごい」「難しい」といったコメントをいただきました。
また、以下のような貴重なコメントもいただいております。

  • レコチョクって、こんなこともやっていたんですね。開発しているイメージがなかったから驚いた。
  • これから事業として推進していくんですか?
  • これ欲しい。売っているんですか?売り出すんですか?
  • 児童とか障害がある方も遊べて良さそう。
  • 子供向けに勉強会を開いているから参考にさせてもらう。
  • 自分の会社でもMaker Faireなどに出展したいと思っているから参考にさせてもらう。
  • 物理的なメジャーがあっても良かった。足がメジャーになっているとか。
  • トロンボーンみたいな操作感ですね。トロンボーン奏者ならうまく演奏できそう。
  • どのセンサを使用されているんですか?

これらのコメントをもとに、今後の活動について考えていきたいと思っています。
本当にありがとうございました。

まとめ

MFTにレコチョクマミンを出展できたことは、非常に価値ある経験でした。
今まで3DプリンターやM5Stackなどの技術は触れたことはなかったですが、
思いのほか形にすることができ、やってみることの重要性を感じました。

企画段階から完成に至るまで、多くの試行錯誤がありました。
レコチョクマミンのボディの作成やプログラムの調整などに時間を費やしましたが、それにより作品のクオリティを向上させることができました。
実際にご来場者様がレコチョクマミンで楽しんでいる姿を見ることができ嬉しく思います。

また、貴重なコメントもいただき、改善点や今後の活動について多くの示唆を得ることができました。
いただいた意見を生かし、更なる発展を目指していきたいです。

最後になりますが、関係者一同、この機会を提供していただいたMFTを主催いただいたオライリー・ジャパンの皆様、
そしてレコチョクマミンを体験してくださった方に深く感謝しています。
これからも音楽×新しい体験を生み出すために努力してまいります。